2023年10月に対馬もりびとの森1号(貝口 スス山)は環境省の自然共生サイトに登録されました。長崎県では、現時点では唯一の登録となります。モニタリングにより、ツシマヤマネコも確認できました。

対馬では、個人所有者(地主)が管理できなくなった森が増えています。ツシマシカが増えずぎており、森林は荒れ放題になっている場所が散見されます。一方で、豊かな資源が眠る森づくり活動をしたい若者もいます。地主と森づくりの担い手(対馬もりびと)をマッチングしていく仕組みが必要です。
対馬の89%が森林。その森林の恵みを最大限享受し続けることが、私たち対馬に暮らす人々の豊かさに直結すると考えています。対馬には、絶滅が危惧されており、対馬にしか生息しない野生の猫、ツシマヤマネコも森林で暮らしています。
ヤマネコなどの多様で貴重な生きものと私たちがともに持続可能に利用できる森づくりはどのようなものか。どんな保全活動をしたら良いのか。
対馬もりびとが認定する「対馬もりびとの森」は、地主から森を借り受けて、森の保全と持続可能な利用によって、後世までツシマヤマネコが住む豊かな森を守っていくための場所です。
そんな「対馬もりびとの森」第1号は、対馬もりびと協同組合の代表理事を務める松本代表の会社(対馬木材産業(株))が所有する豊玉町貝口にある3.3haの杜です。
<対馬もりびとの森 貝口スス山について>
管理・活用の目的は、ツシマヤマネコやニホンミツバチをシンボルとして、多様な生物の生息環境である里山保全に貢献することです。また、対馬もりびと(対馬の森を守る人)の研修や活動の拠点として整備し、対馬もりびとを増やしていく拠点の一つとします。当サイトは、対馬もりびとが森林の管理にとどまらず、林産物の収集(資源の発掘)、レクリエーションや環境教育の場として持続可能な利用を行い、定期的なモニタリングを行うことで、森の価値を“見える化”していくモデル林です。
対馬もりびとの森1号は、長崎県対馬市の壱岐対馬国定公園第2種特別地域に指定された場所に位置する3.34haの社有林。ツシマヤマネコやツシマテンを頂点とする対馬の典型的な二次的自然環境(里山林)の生態系があり、主な植生は常緑広葉樹(低木→ツバキ、高木→タブノキ)と一部、針葉樹(ヒノキ林)がある。その他、コナラ、ノグルミ、アベマキ、タケ類(ヤダケ?)、ヤマザクラ、モチツツジ、アカメガシワ、ウルシ(詳細未同定)、ヒサカキなどが自生しています。明るい林内を創出するために、広葉樹・針葉樹は間伐を行い、そのための作業道も設置しました。また、サイト内には、小規模皆伐を行った区域があり、防鹿柵を設置して、天然更新を行っています。その一部は苗畑場として活用していく予定です。今後関係者と管理保全計画を作り、保全・管理・モニタリングを継続的に実施していきます。
サイト内には、防鹿柵を設置した区域があり、その中に苗畑場を設けています。苗畑では、多様な在来の樹木の苗を育てており、今後、それらを本サイトに植樹していく予定です。また、作業道は、トレッキングにも適したルートにしており、山頂まで道を作り、展望所(ベンチ)も設置しています。森づくりや獣害対策研修等の場としても提供しています。今後は、各種調査のモニタリングや、森林のレクリエーションやキャンプの場としての利用価値も見出し、多主体参加型の森づくりの拠点とします。
ニホンミツバチの蜜源を増やしていくとともに、ツシマヤマネコの餌となるネズミを増やすためのゾーニングや下層植生の回復(獣害の捕獲や防鹿柵の設置、落葉広葉樹の植栽等)等の管理計画の策定を関係者と行います。管理計画をもとに、森林整備を継続的に行うとともに、森づくりや獣害鳥獣対策の担い手(対馬もりびと)の育成・交流の場、研究を目的とした演習林、モニタリングサイトとしての機能も有するようにしていきます。多様な研究者を呼び込み、植生の変化や動植物の多様性の変遷などをモニタリングしていく場所にしていきたいと考えています。
これまでの活動
2021年度 作業道づくり・広葉樹の間伐・防鹿柵の設置(対馬木材の自主事業で実施)
2022年2月 林業研修会の開催・現地見学
2022年4月 ゆずの植樹祭・蜂洞作り体験イベントの実施
2022年10月 有害獣ハンター研修の実施
2022年度 自然共生サイトへの試行に参加・植生調査の実施
2023年9月 苗畑の管理(除草作業)
2023年9月 豊玉中学校の総合学習
その他、長崎大学や九州大学の研究者・大学院生へのフィールドの提供

モニタリング(自動撮影カメラ)によりツシマヤマネコを確認しました。
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